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内装解体工事を計画する際、慎重に対処すべき問題の一つがアスベスト対策です。
アスベストは2006年に全面使用禁止となりましたが、それ以前に建てられた建物の多くには今もアスベスト含有建材が残っています。
内装解体時にアスベストを適切に処理しなければ、作業者や周辺住民の健康被害になりかねません。
またそれだけでなく、法令違反による罰則や工事の中断といった深刻な事態を招く可能性があります。
本記事では、内装解体におけるアスベスト対策について解説していきます。
内装解体前に知っておきたいアスベストの基礎知識
アスベストは「石綿(せきめん・いしわた)」とも呼ばれる天然の繊維状鉱物で、主にクリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)など数種類あります。
耐熱性、耐薬品性、絶縁性に優れ、かつては建築材料・断熱材・防音材などに広く使用されていました。
しかし、アスベストの繊維は非常に細く空気中に飛散しやすいため、人体に吸入されると肺がんや中皮腫などの深刻な健康被害を引き起こすことが明らかとなり、使用禁止や規制が強化されてきました。
内装解体などの工事でアスベスト含有材が存在する場合は、アスベストのリスクと対策を理解しておくことが重要です。
なぜアスベストが広く使われていた?
アスベストが広く使われていたのは、「安い・強い・燃えない」という理想的な特性を持っていたからです。
1000℃以上の高温にも耐える耐火性と断熱性を備え、摩耗や劣化にも強く、長期間の使用に適していました。
さらに、安価で大量供給が可能だったため、建材や設備など幅広い分野で利用されたという背景があります。
アスベスト含有建材が使われていた時期
日本におけるアスベストの使用は1960年代から本格化し、高度経済成長期の建設ラッシュとともに急速に普及しました。
独立行政法人|環境再生保全機構の記事によると、1970年代から1980年代にかけては年間30万トンものアスベストが輸入されていたといいます。
1975年には吹付けアスベストの使用が原則禁止されましたが、アスベスト含有率5%以下の吹付けロックウールは1980年まで使用が続きました。
その後も段階的に規制が強化され、1995年には特に有害とされる青石綿と茶石綿の使用が禁止、2004年には白石綿を含む製品の製造も原則禁止となり、最終的に2006年9月1日以降は含有率0.1%を超えるアスベスト製品の製造、輸入、使用が全面的に禁止されました。
この歴史を踏まえると、2006年以前に建築された建物には何らかのアスベスト含有建材が使用されている可能性が高いといえるでしょう。
特に1960年代から1990年代前半に建てられた建物については、内装材にもアスベストが含まれている可能性を前提として解体計画を立てる必要があります。
アスベストによる健康被害のメカニズム
アスベストの危険性は、髪の毛の5000分の1という極めて細い繊維構造にあります。
一度空気中に粉じんとして飛散すると長時間浮遊し、吸い込まれた繊維は肺の奥深くにまで到達して留まり続けます。
人体の免疫システムは異物を排除しようとしますが、アスベスト繊維は化学的に安定しているため体外に排出されにくく、長期にわたって肺組織を刺激します。
問題となるのがアスベストによる健康被害は、曝露量や曝露期間、個人差によって発症リスクが異なることです。
アスベストを吸い込むことで起こる病気には以下のように種類があり、いずれも長い潜伏期間を経て発症するとされています。
・石綿肺 15〜20年
・石綿による肺がん 20〜40年
・石綿が原因となる中皮腫 30〜50年
そのため、現在症状がなくても過去にアスベストへ曝露した可能性がある場合は、定期的な健康診断を受けることが推奨されています。
内装解体作業においては、このリスクを十分に認識し、作業者だけでなく周辺住民への影響も考慮した安全対策の徹底が不可欠です。
解体時のアスベスト調査の法的義務
2022年4月1日から、建築物の解体や改修工事を行う際のアスベスト調査に関する規制が大幅に強化されました。
大気汚染防止法および石綿障害予防規則の改正により、工事の規模や請負金額にかかわらず、すべての解体・改修工事において事前調査が義務付けられています。
この法改正の背景には、過去に見落とされがちだった小規模工事でのアスベスト飛散事故や、不適切な工事による健康被害の発生があります。
事業者は、これらの法的要件を正確に理解し、遵守することが求められています。
事前調査が必要な工事の範囲
調査の対象となる工事は、建築物の解体工事、改修工事、補修工事など、建材を除去または損傷させる可能性があるすべての工事です。
床面積の合計が80平方メートル以上の建築物の解体工事、請負代金の合計が100万円以上の建築物の改修工事、そして請負代金の合計が100万円以上の特定の工作物の解体、または改修工事については、調査結果を労働基準監督署に報告する義務も課されています。
重要な点は、これらの基準に満たない小規模工事であっても調査自体は必要であるということです。
例えば、店舗の内装を一部改修する場合や、住宅のリフォーム工事を行う場合でも、その工事で触れる可能性のあるすべての建材についてアスベスト含有の有無を確認しなければなりません。
調査を行う者には一定の資格要件があり、2023年10月1日以降は、建築物石綿含有建材調査者講習を修了した者など、専門的な知識を持つ有資格者による調査が義務付けられています。
調査結果の報告義務
一定規模以上の工事では、調査の結果を「石綿事前調査結果報告システム」を通じて、労働基準監督署と地方公共団体の両方に報告する必要があります。
この電子報告システムは、報告の効率化と情報の一元管理を目的として導入されたもので、工事開始前に必ず報告を完了させなければなりません。
報告内容には、工事の概要、調査実施者の情報、建材ごとのアスベスト含有の有無、そして含有が確認された場合の除去方法などが含まれます。
報告を怠った場合や虚偽の報告を行った場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
さらに、不適切な調査により工事中にアスベストの飛散事故が発生した場合には、工事の中止命令が出されるだけでなく、民事上の損害賠償責任を問われる可能性もあります。
このような法的リスクを避けるためにも、事前調査は確実に実施し、結果を報告することが極めて重要です。
アスベスト含有建材の見分け方
内装解体において遭遇する可能性のあるアスベスト含有建材は、飛散性の程度によってレベル1からレベル3まで分類されています。
この分類は、除去作業の危険度と必要な対策のレベルを示すもので、レベル1が最も飛散性が高く危険とされています。
実際の現場では、設計図書や仕様書などの書面調査から始め、次に目視による現地調査を行い、最後に必要に応じて分析調査を実施するという三段階のアプローチが推奨されています。
特に改修や増築が繰り返されている建物では、異なる時期に異なる建材が使用されている可能性があるため、場所ごとに丁寧な調査が必要です。
レベル1建材の特徴
レベル1に分類される建材は、主に吹付け材と呼ばれるもので飛散性がとても高いといわれています。
代表的なものとして、吹付けアスベスト、アスベスト含有吹付けロックウール、アスベスト含有吹付けバーミキュライト(ひる石)、アスベスト含有吹付けパーライトなどがあります。
これらは主に鉄骨造建築物の耐火被覆、機械室やボイラー室の吸音・断熱材、立体駐車場の天井などに使用されていました。
レベル1建材の特徴は、綿状またはスポンジ状の柔らかい質感で触ると簡単に繊維が剥がれ落ちることです。
色は白色、灰色、茶色など様々ですが、経年劣化により変色している場合もよく見られます。
特に、1975年以前の建物では天井裏や機械室など普段は目に触れない場所に施工されているケースが多いため、解体時に初めて発見されることも少なくありません。
除去作業には厳重な対策が必要となり、作業場所の完全密閉、負圧管理、エアシャワーの設置などの対策があります。
レベル2建材の特徴
レベル2建材は、主に保温材、耐火被覆材、断熱材として使用されていた成形品です。
具体的には、アスベスト含有保温材、アスベスト含有耐火被覆板、アスベスト含有断熱材などが該当します。
これらは配管の保温材、ボイラーや焼却炉の断熱材、屋根用折板の裏打ち材、煙突の断熱材などとして広く使用されていました。
配管保温材は白い布や金属板で覆われた円筒状の形状をしており、経年劣化により被覆材が破損している場合は、内部の繊維状の断熱材が露出していることがあります。
耐火被覆板は、主に鉄骨の梁や柱に取り付けられた板状の建材で、厚さは25ミリメートルから50ミリメートル程度のものが多く、比較的硬い質感を持っています。
レベル2建材は、通常の使用状態では飛散リスクは低いものの、破砕すると大量のアスベスト繊維が飛散する可能性があるため、湿潤化や手ばらし作業など飛散を最小限に抑える工法の採用が必要です。
レベル3建材の特徴
レベル3建材は、アスベストが他の材料と固く結合された成形板等のため、通常の使用状態では飛散性が低いとされています。
しかし、内装解体では最も遭遇する頻度が高く、種類も多岐にわたります。
代表的なものには、石綿含有スレート板、石綿含有ビニル床タイル、石綿含有けい酸カルシウム板第1種、石綿含有石膏ボードなどがあります。
これらは天井材、壁材、床材、屋根材など、建物のあらゆる部分に使用されている可能性があります。
レベル3建材の識別は特に困難で、見た目だけでは非含有製品との区別がつかないことがほとんどです。
例えば、ビニル床タイルは1987年頃まで製造されていたもののほとんどにアスベストが含まれていましたが、外観は現在の製品と変わりません。
けい酸カルシウム板も、製造時期によってアスベストの含有・非含有が分かれ、メーカーの製造番号を確認しなければ判別できないケースが多くあります。
このため、2006年以前に製造された成形板等については、原則アスベスト含有とみなして対処することとされています。
解体時には、電動工具による切断や破砕を避け、手作業による取り外しと散水による湿潤化を徹底することで飛散リスクを最小限に抑えます。
アスベスト除去作業の安全対策
アスベスト除去作業における安全対策は、作業者の健康を守ること、周辺環境への飛散を防ぐという二つの重要な目的があります。
作業の安全性を確保するためには、適切な作業計画の策定から始まり、必要な届出の提出、作業環境の整備、そして廃棄物の適正処理まで一連のプロセスを実施します。
作業を行う事業者は、石綿作業主任者の選任が義務付けられており、この資格者の指揮のもとで作業を進める必要があります。
また、作業者全員に対する特別教育の実施、適切な保護具の着用、健康診断の実施など、労働安全衛生法に基づく様々な措置を講じなければなりません。
作業前の準備手順
アスベスト除去作業を開始する前の準備は、作業全体の成否を左右する重要な段階です。
まず最初に行うべきは、作業計画書の作成と関係機関への届出です。
レベル1およびレベル2の除去作業については、工事開始の14日前までに労働基準監督署へ計画届を提出する必要があります。
この計画書には、作業の方法、使用する設備、作業者の配置、緊急時の対応手順などを詳細に記載します。
次に重要なのが、作業区域の隔離と養生です。
レベル1作業では、作業場所を完全に密閉し、負圧除じん装置を設置して内部を負圧に保つ必要があります。
この際、セキュリティゾーンと呼ばれる三室構造(更衣室、洗身室、前室)を設置し、作業者が汚染区域から外部へ出る際の除染を確実に行える環境を整備します。
養生には専用のプラスチックシートを使用し、隙間がないよう入念にテーピングを行います。
また、作業開始前には、スモークテスターを使用して隔離空間の密閉性を確認し、負圧が適切に保たれていることを検証する必要があります。
作業中の防護措置
作業中の防護措置の中核となるのは、適切な呼吸用保護具と保護衣の着用です。
レベル1およびレベル2の作業では、電動ファン付き呼吸用保護具または送気マスクの使用が義務付けられており、防じんマスクだけでは不十分です。
保護衣は使い捨てタイプのものを使用し、作業終了後は汚染物として適切に処分します。
作業者は、保護具の正しい着脱方法について十分な訓練を受け、特に脱衣時の二次汚染を防ぐ手順を確実に実施する必要があります。
作業中は、常に湿潤化を心がけることが重要です。
除去作業を行う前に、飛散抑制剤を十分に散布し、建材を湿潤状態に保ちながら作業を進めます。
飛散しないように電動工具の使用は極力避け、手作業で慎重に除去することが基本となります。
また、作業環境の測定も重要な要素で、作業場所の境界における石綿濃度を定期的に測定し、基準値を超えていないことを確認します。
万が一、想定外の状況が発生した場合には、直ちに作業を中止し、追加の対策を講じる必要があります。
廃棄物の適正処理
アスベスト含有廃棄物の処理は、廃棄物処理法に基づく厳格な規制のもとで行われます。
廃アスベスト等(飛散性アスベスト廃棄物)は特別管理産業廃棄物として、石綿含有産業廃棄物(非飛散性アスベスト廃棄物)は、産業廃棄物としてそれぞれ異なる基準で処理する必要があります。
飛散性の廃棄物は、除去現場で二重のプラスチック袋に入れるか、堅牢な容器に密封し、「廃石綿等」の表示を明確に行います。
収集運搬においては、特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者に委託し、マニフェストによる管理を徹底します。
運搬中の飛散や流出を防ぐため、密閉された運搬容器を使用し、積み替えや保管を行う場合も飛散防止措置を講じる必要があります。
最終処分は、管理型最終処分場での埋立処分または溶融処理などの無害化処理が行われます。
処理費用は通常の産業廃棄物と比較して高額になりますが、不適正処理は重大な法令違反となるため、信頼できる処理業者を選定し最終処分まで管理することが事業者の責任です。
まとめ
内装解体時のアスベスト対策は、法的義務の遵守と健康被害の防止という二つの観点から、とても重要な課題です。
2006年以前に建築された建物には高い確率でアスベスト含有建材が使用されており、適切な調査と対策なしに解体工事を進めることは、作業者や周辺住民の健康を脅かすだけでなく、法令違反による処罰や損害賠償のリスクも伴います。
事前調査から除去作業、廃棄物処理まで、各段階で専門的な知識と技術が求められるため、信頼できる専門業者の選定が重要です。
業者選定の際は、建築物石綿含有建材調査者の資格保有状況、過去の施工実績、保険加入状況などを確認し、価格だけでなく安全性と確実性を重視した選択を行いましょう。
アスベスト対策には相応の費用と時間がかかりますが、これを必要な投資として捉え、計画的に実施することで安全で円滑な内装解体工事の実現が可能となります。
お急ぎの場合は電話窓口まで、
お気軽にお問い合わせください。
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